- 題 目:「イズミルからトルコの「いま」と「むかし」を見る」
- 報告者:末森晴賀氏(北海道大学大学院文学研究科博士後期課程)
- 場 所:北海道大学人文・社会科学総合教育研究棟(W棟) W517
- 要 旨
報告者が現在留学しているイズミルは、トルコの西端に位置する世俗的な工業都市で港町である。今回、滞在中に見たことや考えたこと、今までの研究成果について報告を行った。
イズミルから見えるトルコは、政治が絡み合って激しく揺れ動く社会である。締め付けを強める大統領とそれに従わないイズミルのせめぎ合い、中央アジアへ拡大するトルコ・ナショナリズムの一般人への浸透、シリアだけでなくトルコ国内の他の地域から押し寄せる難民や移民など。その一方で、日常的なやり取りの中に、イスラームや、距離の近い人付き合いなどトルコらしさが見え隠れする。表面の政治的・社会変化の奥底に、そこに住む人々の思想や行動があるという実感は、自分の研究の柱となった。
現在行っている研究は、17~18世紀のオスマン朝とイズミルの関係についてである。特に、17世紀後半に大宰相を輩出して政治の実権を握ったキョプリュリュ家が、これまでオスマン政府が放任していたイズミルへ介入するようすを、インフラ活動や、商業政策を中心に分析した。その中で見えてきたものが、キョプリュリュ「家」の人々の人間関係やそれをもとに動く社会である。今後、新たに見つけた史料をもとに分析を進める中で、その先にある「オスマン朝らしさ」を明らかにしていきたい。