第288回東洋史談話会(2018年5月11日開催)

  • 「研究対象地域訪問報告会」
  • 報告者:西嶋尚義氏(北海道大学文学部4年)
  • 要 旨

報告者は2月末から3月はじめにかけてモロッコの諸都市(ラバト、シャウエン、フェス、カサブランカ)に7泊8日で滞在した。シャウエンを除いて、これらの都市はモロッコでも特に栄えた都市であり、歴史的にも重要な役割を果たしてきた。数百年単位で現在まで残り続け、生活の場として使われている。つまり、「生きた」歴史の姿を直に見ることができるのである。例えば、フェスのカラウィーイーンモスクはイブン・ハルドゥーンも学んだ学問の場で、今も高等教育の場として利用され続けている。文献でしばしば目にする地名ではあるが、実際の空気・風景・人びとの様子を想起することは、実際に現地に赴かなければ困難である。それらがどのような様子であるのか、そのような歴史を引き継いで今あるモロッコの様子を体験することができたのは極めて意義深いものであった。

  • 報告者:海野翔太郎氏(北海道大学文学部3年)
  • 要 旨

報告者は3月19日から同28日にかけてモロッコ王国を訪問した。現地滞在期間は8日間で、マラケシュ、エッサウィラ、フェス、シェフシャウエン、ラバトを訪れた。副題にもあるように移動距離は約1800kmと短期間での大移動を敢行した。今回のモロッコ訪問は自らが研究対象とする地に足を踏み入れることで歴史を学ぶ者としての在り方を学び、そして、異文化の「風」に触れることで今までの見方・考え方を変えてくれるインフルエンサーとなってくれることを期待して臨んだ。結果として、報告者のこの期待は大いに満たしてくれたと言えよう。モロッコでの様々な経験を基に今後の研究活動の充実を図りたい。最後に今回のモロッコ訪問をサポートしてくれた私の級友に感謝の意を表したいと思う。

  • 報告者:佐藤穰氏(北海道大学文学部3年)
  • 要 旨

今回の報告では、現地を実際に旅行して目にした現在のトルコの姿を伝えることを目的とした。現地で訪れた都市はイスタンブールとイズミル、その周辺のマニサなど数都市に過ぎず、またこれらはすべてトルコ国内においても経済的に豊かな場所である。とはいえ、これらの都市を歩いてみても、現在のトルコの実情の一端を垣間見ることができたと思われる。
報告においては、近年のトルコの政治状況を踏まえ、現地で見た情報や、現地留学中の末森さんから聞いた話も含め発表を行った。現地の写真の利用はやや不十分であったが、現地の実情を伝えることができ、また自身の現地への知見は深まった。総合的にみて、有意義な旅行だったといえる。

  • 報告者:髙橋稜央氏(北海道大学大学院文学研究科修士1年)
  • 要 旨

報告者は2017年2月と2018年3月の2度、当時在籍していた中央大学文学部の学外活動応援奨学金を得て、研究対象地域であるスペインとモロッコで、文献収集と現地調査を行なった。本報告は、対象をスペインに絞って、その時訪問した中からエスコリアル修道院、トレドのシナゴーグ、セビーリャ大聖堂、コルドバのメスキータやザフラー宮殿跡、グラナダのアルハンブラ宮殿などイスラーム時代の遺構について、歴史的な事象としてレコンキスタの進展と絡めながら説明を行ったものである。本調査では、それぞれの都市がキリスト教の中でもイスラーム時代の残響をはっきりと残し、現在ではそれらを町興しや観光資源などにも利用していたことを直接体感することができた。また報告では、建造物以外にも、10世紀コルドバの詩人イブン・ザイドゥーンとワッラーダの詩が刻まれた碑文も紹介したが、これが何時、何の目的でコルドバに建てられたのかはまでは明らかにできなかった。上述のようなイスラーム時代の遺産を、現在のスペインの人々、またアンダルシーアの人々がどのように捉えているのかといった現代社会につながる問題も今後の課題の一つとしたい。