第290回東洋史談話会(2018年8月9日開催)

題目:「戒煙より見る清末禁煙運動」
報告者:坂東 泰氏(北海道大学文学研究科修士1年)
要 旨

報告者は、昨年度、北海道大学文学部に提出した学士学位請求論文に基づく研究報告を行った。本研究の目的は、清朝が1906年9月20日より開始した禁煙運動(アヘン禁圧運動)について、「戒煙」という点に注目し、従来の研究とは異なる見方を模索することである。「対象地域を設定して、その地域について厳密な検討を加える」という手法は採らなかった為、概括的な見方を得るに止まったが、以下に要旨を記しておきたい。第一に、清朝は、「戒煙」を梃にアヘンの流通管理を模索していた。第二に、上海国際アヘン委員会(1909年2月1〜26日開催)における清朝の動向は、第一の点と大いに関係しており、同委員会で採択された議定書の条文にその影響が認められること。第三に、各地に設けられた戒煙所は、アヘンの流通点という側面が強い。又、禁煙運動による煙館(娯楽として吸飲する為のアヘンを提供する店)等の閉鎖と並行して戒煙所が設置されているため、結果的に既存のアヘンの流通構造は温存されており、これが辛亥革命以降の罌粟栽培再開に関係しているであろうこと。以上の見方を提示した。