第296回東洋史談話会・科研プロジェクト「1949年前後の西南民族エリートの覚醒と帰趨に関する資料批判主義的再検討」秋季集会(2019年10月12日)

* 大型台風の影響で、発表予定者の矢久保典良氏は来札できず、科研代表者の吉開と分担者の清水享氏が研究報告を行なった。発表予定者の野本敬氏は無事来札し、研究交流を行なった。

【報告①】

題目:「黔滇川三省境界地域の彝族土司後裔に関する現地調査成果と“紅軍游撃隊”関係史料問題」

報告者:吉開 将人(北海道大学文学研究院 教授)

本科研は、西南中国の非漢族エリートが近代を通じていかなる覚醒を経験し、その結果、中共政権の西南中国進駐に際していかなる選択をしたのかという問題について、歴史学的な関心を軸に、西南中国の各地域・各エスニック集団、関連する諸分野を専門とする研究者たちが、共同で解明を目指す学術的プロジェクトである。研究代表者であり、貴州・雲南の「夷苗」(今日の彝族・苗族)エリートについての研究を分担する報告者は、現在校正中の「「夷苗」連帯の夢(前篇続)」、現在執筆中の同続篇の内容を基礎に、今春の現地調査の成果、今夏の史料分析の成果として得られた新たな知見について紹介を行なった。

【報告②】

題目:「国史館における史料収集(2019年8月)」

報告者:清水 享(日本大学 教授)

2019年8月19日(月)から23日(金)にかけて国史館台北閲覧室・新店閲覧室において閲覧収集した史料を紹介した。

今回閲覧収集した史料は四川省涼山地方や涼山彝族および、彝族の民族エリートなどに関わるものだった。これらの史料のなかでも曲木倡民(王済明)、李仕安、孫仿など民族エリートの個人資料(履歴書)は注目に値するものであった。また蔣介石や宋美齢が西昌を訪問した際の写真資料も閲覧収集しており、これも紹介した。中国西南地方の少数民族と蔣介石や宋美齢がともにフレームに収まっているこうした写真資料は貴重なもので、彝族と蔣介石、宋美齢の関わりや、民国時代末期の少数民族と国民政府の関わりについて、多くの示唆を与えるものであった。

この他に彝族に関わる資料ではないが、西康と四川の境界に位置するチベット系の土司の土地争いの史料なども紹介した。